上気道と下気道、という言葉をご存じでしょうか? 上気道とは、鼻腔、副鼻腔、咽頭、喉頭のことで、鼻から声帯までを指し、下気道とは、声帯以下の、気管、気管支、細気管支、肺胞のことを指します。
上気道のアレルギー性疾患であるアレルギー性鼻炎(花粉症など)と、下気道のアレルギー性疾患である気管支喘息には密接な関係があることが最近判明しており、
この理論を、one airway, one disease(一つの気道の同じ病気)と呼びます。
実際、花粉症の季節にやや遅れて喘息を発症したり、花粉症の時期に喘息が悪化したり、あるいは逆に、アレルギー性鼻炎をきちんと治療すれば喘息が軽くなる、などの現象がよく見られます。
さらに、鼻腔の周囲の頭蓋骨の中には、副鼻腔という広い空間があって、鼻腔と繋がっています。
声を響かせるための空間だと言われていますが、本当の機能はまだよくわかっていません。
この副鼻腔の粘膜にアレルギー性の慢性炎症である、好酸球性副鼻腔炎が起こることが最近増加しており、症状としては、
鼻汁、鼻閉の他に、鼻茸を伴ったり、嗅覚の低下と喘息の合併をきたすことが特徴とされています。
副鼻腔炎といえば、昔よく子供に見られた、いわゆる蓄膿症は好中球性副鼻腔炎でしたが、最近では、この、アレルギー性の好酸球性副鼻腔炎が
大部分を占めるようになってきました。最新の医学的知見では、好酸球性副鼻腔炎が、重症の喘息の約半数に合併しており、喘息の難治化の大きな原因の一つになっています。
したがって、喘息と診断した場合は、必ず副鼻腔CTを撮影して、副鼻腔炎の合併の有無を同時に見ることが重要であり、
治療においても、喘息だけでなく、副鼻腔炎の治療を同時に行うことが必要とされます。
花粉症や副鼻腔炎は耳鼻科に通い、気管支喘息は呼吸器科に通う、という時代は去り、鼻から気管支・肺までを同時に治療する、airway medicine(気道内科)という
診療科を創設していく努力が、医師の側にも求められていると言えましょう。
睡眠時無呼吸症候群とは、眠っている間に呼吸が止まる病気です。無呼吸、即、窒息死ではありません。
それよりも、きちんとした睡眠がとれないことにより、全身がじわじわと弱っていき、
高血圧、心臓疾患などの生活習慣病になることや、昼間の眠気が強くなってしまうことにより、
交通事故や労働災害を起こしてしまうことが問題となっています。
健康な方と比べて、糖尿病が1.5倍、高血圧が2倍、心筋梗塞が3倍、脳卒中が4倍起こりやすいというデータがあります。
また、1時間に20回以上無呼吸があると、9年後には40%の人が、心臓病、脳卒中、
事故などで亡くなっていたという米国での衝撃的な報告があります。
病院では、まず、簡単な問診を行い、自宅でできる睡眠簡易モニターを実施し、無呼吸が発見されれば、1泊2日の個室入院で、 終夜ポリグラフィーという、より詳しい検査を行います。これによって、治療法を選択します。治療としてはCPAP療法という、 マスクで送気することで気道を閉じてしまわないようにする方法を中心に行います。同時に、禁煙、禁酒、減量など、生活習慣の改善にも取り組んでいただきます。
3週間以上続く咳に対して、適切な診断と治療を短期間で行うのは、専門医にとってすら至難の業です。
原因としては、レントゲンで影の出ないもの(心因性、副鼻腔炎、花粉症、逆流性食道炎、喘息、気管支結核、中心性肺がんなど)と、
レントゲンで影が出るもの(肺結核、肺がん、過敏性肺臓炎、肺腺維症など)があります。レントゲン、肺機能検査、感染症や
アレルゲン等の血液検査を行って正しく診断することにより、初回治療における咳消失率は約90%にも達します。
慢性の喘息であっても、最近の強力かつ安全な予防薬を正しく使用すれば、日常生活に支障のない良好なコントロールを
めざす事ができます。薬剤師による詳しい吸入指導とともに、薬以外の生活上の注意点についても解説します。
あきらめや独り合点は捨て、思い切って最新の医療に触れてみてください。
検診などの胸部レントゲンは、少しでも怪しいところがあると、念のために指摘されます。悩んでいる時間があれば、 早めに受診して決着をつけたほうが賢明でしょう。もし、病気が見つかっても、早期発見、早期治療ができることになります。 CTなどを駆使して早期決着のお手伝いをいたします。
呼吸器・アレルギー専門外来 担当医師
小林 良樹